
中医学独特の考え方として独自の整体観念というものがあります。
この言葉は中医学に興味を持った方なら、必ず一度は耳にする言葉かと思いますが、これがまた非常に分かりづらく難しい。
ただ、この点が西洋医学の考え方と異なる部分であり、最も大切なポイントになるので、今回は中医学の整体観念についてお話します。
独自の整体観念とは?
中医学の整体観念とは...
- 人体の全体性(バランス医学)
- 自然との一体性(自然医学)
というこの二つの言葉を指します。
人体の全体性とは?
人体の全体性(バランスの医学)とは、中医学では人体をひとつの有機体として捉える(臓器の独立性より連動性を重視する)という考え方です。
中医学では内臓を下記のように「五臓六腑」というものに分けられます。
- 五臓は「肝・心・脾・肺・腎」
- 六腑は「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」
西洋医学では、内臓の問題はその臓器固有の問題であると考えられ、例えば肺の問題なら呼吸器内科、胃腸なら問題は消化器内科というような感じに、各臓器ごとに専門家がいて診療科も異なります。
専門的な知識があるために、部分的な臓器の症状に関しては、迅速に治療を施せるというメリットがある反面、
いくつかの臓器にまたがる病気や疾患に対して総合的な判断や治療を下すことが難しくなるという欠点があります。
それに対して中医学では、五臓六腑はそれぞれが固有の特徴はもつものの、
全体として人間の生命維持や成長に欠かせない栄養物質(気血水)を作り、循環させ、貯蔵するという目的のために連動して働いていると考えます。
例えば五臓六腑のうち、肝(精神・情緒)に問題が出ると、火(睡眠や脳)と土(消化・吸収)に問題が出ると考えられます。(相生と相克の関係)
つまり、中医学と西洋医学の大きな違いは
- 身体の全体を診る(中医学)
- 身体の部分を診る(西洋医学)
こういった違いがあると言えるでしょう。

中医学は臓腑の全てのつながりを考え、その繋がりを理解していくことで、
患者の病態や性質、体質といった「証」の分析力がつき、養生法や治療を選択するための知識が増えていくことになります。
中医学の独自の整体観念である、人体の全体性(バランス医学)を頭に入れ、西洋医学と切り離して考えていくことがとても大切になります。
自然との一体性とは?
次は、中医学のもう一つの代表的な整体観念の『自然との一体性』についてです。
これを一言で説明すると、自然界の変化は人体にも影響を及ぼすという考え方のことです。
「天人合一」という言葉がある通り、人と自然界(宇宙)は統一体と考えられており、自然界が人体に影響を与える要因は、『季節』と『六気』があります。
- 季節:春・夏・長夏・秋・冬
- 六気:風気・寒気・湿気・熱気・暑気・燥気
季節と六気はいつも一定ではなく、日本のように四季があればその季節に応じて、強くなったり弱くなったりする「気」が存在します。【主気(しゅき)】
例えば梅雨の時期は「湿気」が主気となり、冬は「冬気」が主気となります。
2000年以上前の中国の人々は、毎日を健やかに暮らしていくために、季節や主気の影響に逆らわずに過ごしていました。
しかし、文明が発達して現代人の生活は格段に便利になったが故に、主気を無視し、時には真逆の生活をしていたりしするせいで、
免疫力が下がったり、様々な病気にかかりやすくなったと言えるでしょう。
したがって、現代人は、今一度自然と一体化するような生活を心がけることができれば、主気の影響で体調が一時的に失調したとしても、心がブレずに過ごすことができるでしょう。
まとめ
整体観念とは大きくこの2つを指す。
- 人体の全体性(バランス医学)
- 自然との一体性(自然医学)
部分的に対処をしていく西洋医学と異なり、中医学は人体の全体性(臓器ごとの連動性)から症状を見ていくので、
個々の体質に合った治療法や対処法を提案することができる。
また、季節に代表される自然界の気候(風気・寒気・湿気・熱気・暑気・燥気)は、
私たちのカラダに影響を与えているので、自然といかに逆らわないで過ごすかが現代人の健康の鍵になる。
いわゆる”不定愁訴”と言われる症状に対して、今後中医学の独自の整体観念は大きく役に立つ時代がやってくると考えられるでしょう。
【中医学入門編】
たった5時間で病になる前の状態をいち早く見つけ
“病に向かわない対処法"を体得できる!
未病治Basicアドバイザー認定講座
